【浜松企業紹介】滝沢サウナ|浜松・浜名区で描く地域の余白と未来

企業紹介

浜松市中央部から車を走らせること約45分。豊かな緑と清流に囲まれた浜松市浜名区滝沢町。この静かな山あいの地でサウナから新たな価値を産み出そうとしている若者がいます。滝沢サウナを運営する伊藤麗生(いとう れい)さん。

なぜサウナという道を選び、学生起業家として歩み始めたのか。その裏側に隠された想いを詳しく伺いました。

【※Instagram情報】

独自の立ち位置

―― 本日はよろしくお願いします。まずは、現在どのような事業を展開されているのか教えてください。

よろしくお願いします。
現在は浜松市の滝沢町という地域にある滝沢キャンプ場でテントサウナのレンタル事業を行っています。

―― レンタルサウナという言葉には何か意味やこだわりがあるのでしょうか。

はい。行政に提出しているのは滝沢キャンプ場の利用者に対してサウナの一式を貸し出すレンタル業という形で運営しています。よくサウナ屋さんですよね?と言われるのですが正確にはサウナ一式を貸し出しています。

もちろん、お客さんの方々からすれば大自然の中で本格的なサウナ体験ができる場所であることに変わりはありません。ただ、運営の在り方としてあくまで場所と道具、そして体験のきっかけを提供する役割でありたいと考えています。

なぜサウナだったのか。ウェルビーイングへの問い

―― 学生という立場でなぜサウナという事業を選んだのでしょうか。きっかけを教えてください。

理由は大きく分けて二つあります。一つは、私自身のあり方としての選択です。もともと起業したいという思いが強く、自分の手で何かを形にしたいと考えていました。学生という立場ですので大きな資本があるわけでも特別な技術があるわけでもありません。その限られた条件の中で何なら勝負できるかを考え抜いた結果、アウトドアサウナという業界に辿り着きました。

もう一つは、ビジネスを通じて提供したい価値です。インターンシップや就活を経験している中で、「人が幸せであるためにはウェルビーイング(心身ともに満たされた状態)が不可欠ではなだろうか」ということを強く感じました。現代社会、特にこれから社会に出る私たちのような世代にとって、提供すべき価値とは何だろうと考えた時、テントサウナが作る余白という着想に行き着いたんです。

―― 余白ですか。興味深いキーワードですね。

はい。日々の生活の中で私たちは常にデジタルな情報に囲まれ、効率化をより求められています。そんな日常の導線の中にあえて何もしない時間や心と体に自然な形でアプローチできる時間を作りたい。サウナなら自然と余白を提供できると考えました。

実は、最初は勢いで行ってしまった部分もありましたのでD2Cで靴乾燥機とかニッチな家電製品の販売も候補に挙がっていました。でも、自分自身の持つリソースや社会に届けたいメッセージを重ね合わせた時、やっぱりサウナ以上のものはなかったんです。

1ヶ月で20施設を走破。徹底した顧客目線の追求

―― 事業を運営する上で最も大切にしている価値観を教えてください。

何よりも顧客目線に立つことです。言葉にするのは簡単ですが徹底するのは本当に難しいと感じています。

サウナをやると決めてから徹底的に競合をリサーチをしました。近隣の温浴施設はもちろん、スーパー銭湯からアウトドアサウナまで一ヶ月間で約20以上の施設を回りました。二日に一度、あるいは毎日どこかのサウナに足を運んでなぜお客さんが楽しんでいるのか、何が求められているのかを自分自身が一人のお客さんとして体感し続けました。

―― 凄まじい行動力ですね。遠方まで行かれたことも?

はい。東京で開催されているサウナイベントや有名な施設はもちろん、気になるアウトドアサウナがあれば片道約3時間車を走らせました。ただサウナに入るのではなく導線はどうなっているか、スタッフの対応はどうか、椅子に座った時の視界はどうか。そういった細かい部分を全部、自分のサービスに活かすために吸収していきました。

現在も利用してくださったお客様にはリアルな声を聴くようにしています。アンケートフォームも用意していますが、それ以上に体験後の会話を大事にしています。「どうでしたか?」という問いから、お客様が本当に満足しているポイントや、逆に小さなストレスを感じている部分を拾い上げすぐに改善に繋げる。このサイクルだけは絶対に欠かさないようにしています。

地域の資源を活かす。浜松への恩返し

―― 北海道のご出身でなぜ、この浜松という地を選択されたのでしょうか。

アウトドアサウナにこだわったのは、現代社会へのカウンターでもあります。就職活動を経験して感じたのは、すべてがデジタルで完結していくことへの違和感でした。だからこそ、自然が持つ圧倒的な魅力をもっと日常に近い場所で感じてほしかった。AI領域での起業に勝機はないとも感じていました。

そして、浜松という場所についてです。私自身、浜松に育ててもらったという感覚が強いです。大学生活を通じて素晴らしい出会いがたくさんありました。だからこそ、自分がここで事業を行うことで少しでも浜松を盛り上げたい、面白い若者が挑戦している街だと思ってもらいたいです。

―― 都田という場所も、伊藤さんにとっては特別な意味があるのですね。

そうですね。世間一般には田舎と呼ばれる場所かもしれませんが私には最高の場所です。地域には素晴らしい資源が眠っているのに、それがうまく届けれていないと感じています。私がインターンで培ってきたWebマーケティングの届ける力を使えば市街地や県外からも人をもっと呼べると考えています。

私がここでお金を循環させることで、地域の活性化に繋がるかもしれない。都田という地域をもっと面白い場所にしたい。その体現者でありたいと思っています。

滝沢サウナだけの究極の導線

―― 実際に滝沢サウナを体験する際、他の施設とは違うこだわりは何ですか?

隠れたメッセージとして込めているのは、圧倒的なストレスフリーな導線です。

これまで多くのアウトドアサウナを体験してきましたが、施設が大きくなるにつれてサウナ室から川(水風呂)までが遠かったり、足場が不安定で危なかったりすることが多いんです。せっかくととのいたいのに移動で現実に引き戻されてしまう。

滝沢サウナはサウナを出てから川に入るまで文字通り3歩以内で完結します。川も仙厳の滝から流れてくる非常に質の良い水質です。深いところも浅いところもあり、その日の気分で選べる。ととのいに集中するための究極の導線設計こそが滝沢サウナのこだわりです。

―― 貸切というスタイルも、そのこだわりから来ているのでしょうか。

そうです。他の利用者の目を気にせず自分の好きな音楽をかけたり、ロウリュをしたり、時には川の中に椅子を入れて休んだり。自分の好みに合わせてカスタマイズできる自由こそが本当の意味でのリラックスを生むと考えています。

プロサッカー選手を目指して、そして挫折

―― 少し過去のお話も伺いたいのですが、そもそも浜松に来られたのはサッカーが目的だったとか。

はい。北海道の旭川市出身で小学生の頃からプロサッカー選手を目指していました。高校までは北海道で本格的に取り組んでいたのですが、全国で勝つためには強豪チームとの機械が多い本州へ行くべきだと考えたんです。当時憧れてた先輩が今の大学(常葉大学)にいたこともあり、浜松へ来ることを決めました。

―― 起業へと舵を切るまでには、どのような葛藤があったのですか?

大学一年生の頃、手術を伴う大きな怪我をしました。復帰してもなかなか結果が出ず、体が思うように動かない。このままサッカーだけで終わっていいのかという葛藤の中にいました。

その時、お世話になっていた先輩から「なぜプロサッカー選手じゃなきゃいけないんだ?」という問いを投げかけられたんです。その問いに向き合った時、初めてサッカー以外の社会に目が向きました。それからは、アルバイトを掛け持ちしたり、海外に足を運んだり、インターンに参加したり。自分はどのように生きたいかを探し続けました。

一度、有名企業を狙って就職活動に挑み散敗したこともあります。でも、その経験があったからこそ現在のインターン先と出会い、ビジネスを通じて社会に貢献する喜びを知ることができました。自分のキャリアを自分の足で選ぶ。その一歩目がこのサウナ事業です。

どんな人が滝沢サウナを支えているのか

―― 運営を始めてから、最も心が動いた瞬間はいつですか?

どのお客様も大切ですが、やはり0→1を作ったという実感を得られた時です。自分でリスクを取ってサービスを立ち上げ、集客をし実際にお客様が足を運んでくれる。そして体験を終えた後に笑顔でありがとうと言ってお金を払ってくださる。この一連の流れを目の当たりにできることは今でも毎回感動します。

―― どのようなお客様が利用されることが多いのでしょうか。

一番多いのは、社会人3年目~5年目くらいの方々です。週末に体を休めたい、大切な人とゆっくりした時間を過ごしたいというニーズですね。リピーターの方も少しですがいらっしゃいました。

ただ現状のWebサイトやSNSでは、まだ私の思いの半分も伝わっていないなと感じています。体験した感動や、滝沢の空気感をどう届けるか。そこはまだまだ改善の余地があると思っています。

未来への挑戦。そして、自分への甘えを断つ

―― 今後の展望について教えてください。

まずはこの滝沢サウナをより多くの方に届けるための基盤として固めていきます。そして、地域の枠を超えて浜松って面白いと言ってもらえるようなきっかけを増やしていきたいと考えています。

実は、新しい施設の構想もあります。現在のレンタル業はプライベート感が強みですが、どうしても料金が一定以上になってしまいます。アウトドアサウナを体験してみたいけれど、ハードルが高いと感じている方のために、よりアクセスしやすく別のコンセプトを持った場所を浜松市内に作る予定です。

鷲沢サウナの詳細はこちら

―― 挑戦は続きますね。ご自身の中での課題はありますか?

正直に言えば自分自身との戦いです。私はビビリな性格もあり、一歩を踏み出すことに恐怖を感じる瞬間もあります。でも、やってみなければ分からない。目標に対してどれだけストイックに行動し、改善し続けられるか。起業は人間味が試される場だと思っているので、もっとカッコいい漢になれるよう自分を追い込んでいきたいです。

―― 最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

日々の生活でリフレッシュしたい、余白が足りないなと感じている方。一度滝沢サウナへ足を運んでみてください。自然とサウナがだけのプライベート空間で得られる自分を取り戻す時間は、何物にも代えがたいと考えています。皆さんのととのい体験を、全力でサポートさせていただきます。

インタビューを終えて

サウナという新たなフィールドで見つけた自らの使命。伊藤さんの言葉からは学生という若さゆえの勢いだけでなく、一人の事業家としての覚悟が滲み出ていました。

顧客目線という言葉を誰よりも重く受け止め、一歩ずつ改善を重ねるその姿勢。彼が都田町に撒いた種はやがて浜松全体を彩る大きな価値へと育っていくに違いありません。次に彼が仕掛ける新しいサウナの形も楽しみでなりません。

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