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最終更新日:2026.10.31

ファイブフォース分析とは?|目的と5つの競争要因、利益構造を見抜く方法

ファイブフォース分析の目的とは?単なる競合分析ではない理由

ファイブフォース分析の目的は、業界全体の利益がどこに奪われ、自社がどこから利益を生み出せるのか、その仕組みを明らかにすることです。

ファイブフォースは利益を出し続けやすいかの構造把握

ビジネスにおいて利益を圧迫する要因は、同業他社(ライバル企業)だけではありません。

  • 原材料の仕入れ先や集客プラットフォームなどから高額な費用を請求される(仕入れコストの上昇)
  • クライアントや消費者の値引き要求が強く、定価で売れない(売上の減少)
  • 自社とはまったく異なるカテゴリーの代替サービスへ顧客が流れてしまう(市場の縮小)

このように、利益はライバル企業以外のさまざまな方向へ逃げていきます。ファイブフォース分析は業界内の直接のライバルだけでなく、「売り手」「買い手」「新規参入者」「代替品」を含めた5つの力関係を広い視野で見渡し、自社がこの市場で本当に利益を出し続けられるのかを冷静に見極めるために活用します。

【重要】 PEST分析とファイブフォース分析の重要な関係

ファイブフォース分析を理解する上で外せないのが、マクロ環境を捉えるPEST分析との明確な役割分担と接続関係です。

【弊社関連記事】PEST分析とは?|事実・傾向・仮説の深掘りから顧客変化・ブランド方針へ繋げる方法

  • PEST分析(マクロ領域)
    • 自社で直接コントロールできない社会全体の大きな変化(政治・法律、経済、社会・人口動態、技術革新)を捉える
  • ファイブフォース分析(ミクロ領域)
    • そのマクロな変化を受けた結果、自社がいる業界のプレイヤー同士の力関係が具体的にどう変わるかを捉える

【具体例】 Web制作会社におけるPEST分析からファイブフォース分析への落とし込み

  • PEST分析
    • 【技術(T)】 生成AIの急速な普及 ※これ単体では社会全体でAIが流行しているという抽象的な情報にとどまる

      ▼ 業界の力関係(ファイブフォース)へ落とし込む
       
  • ファイブフォース分析(業界内の力関係の変化)
    • 新規参入の脅威(↑):制作・コーディングの自動化により、未経験者や小規模事業者の参入ハードルが激減する
    • 買い手の交渉力(↑):顧客自身がAIで内製化できるようになり、本当に従来の制作費が必要なのか?と値下げを迫ってくる
    • 代替品の脅威(↑):従来の受託制作ではなく、「ノーコードツール+AI」による即時作成サービスが代替手段として台頭する

導き出される戦略仮説:単なるWebページの制作代行(下流工程)は価格競争に巻き込まれるため、AIでは代替できない「事業戦略の設計」や「導線全体の改善提案」といった高付加価値領域へシフトする。

【注意】どちらか一方だけでは機能しない
  • PEST分析だけの場合
    • 世の中でAIが流行っているという一般論・社会情勢をインプットしただけで満足し、自社の事業が具体的にどんな影響を受けるのか(誰と戦い、どこで利益を出すのか)が分かりません。
  • ファイブフォース分析だけの場合
    • 今現在の力関係を切り取るだけになり、これから押し寄せる社会や技術の大きな地殻変動に気づけず、手遅れになってしまいます。

マクロの変化(PEST)を捉え、それを業界の力関係(ファイブフォース)に落とし込んで未来の変化を読むという両者の行き来があって初めて、実務で勝てる戦略を導き出せます。

ファイブフォース分析は現在から未来への変化を読む

ここで重要なのは、ファイブフォース分析は今現在だけを見てはいけないということです。
現在の力関係を評価するだけでなく、現在のファイブフォースを起点に、今後どういう方向へ変化していくのかという未来の仮説(戦略)を立てることが欠かせません。

社会全体の変化(PEST分析)が発生してから、それが特定の業界構造(ファイブフォース)へ反映されるまでには時間差が生じることもあります。社会では起きているが、まだ業界内には反映されていないマクロの変化をPEST分析で見つけ出し、それが将来の新規参入や買い手の力関係をどう変えるかを先回りして読むことこそが、勝てる戦略を導く鍵となります。

ファイブフォース分析で最初にやるべき業界の定義

ファイブフォース分析を始める際、最初にやらなければならないのが業界の定義です。何を1つの業界として捉えるかによって、洗い出される競合、代替品、そして分析結果が変わってしまいます。

狭すぎても広すぎてもだめ

業界の範囲設定において、多くの人が狭すぎるまたは広すぎるという両極端の罠に陥ります。

  • 狭すぎる定義の失敗例:「〇〇県〇〇市内の客単価3万円以上の高級イタリアン」
    • 市内に数店舗しか存在しない場合、競合が3社しかいないから競争は緩やかだと誤認してしまいます。しかし実際には、記念日など食事として「高級フレンチ」「高級寿司」「鰻の名店」「リゾートホテルや旅行」など、別ジャンルの選択肢と競合しています。
  • 広すぎる定義の失敗例:「〇〇市の飲食業界」
    • ファストフードから居酒屋、高級店まで混ざり合ってしまうと、対象が広すぎて競合が多いという表面的な事実しか見えず、自社がどこで勝負すべきかの判断材料になりません。

業界定義の基準:顧客が同じ目的を満たすために比較する範囲

業界を正しく切り分ける基準は、顧客が同じ利用目的を満たすために、何を比較検討しているかです。

以下の5つの要素を事前に言語化し、業界の境界線を引きます。

  1. どんな商品・サービスか
  2. 誰向けか(ターゲット属性)
  3. どんな地域(商圏・オンラインかオフラインか)か
  4. どんな利用目的(利用シーン・動機)か
  5. 顧客が比較する選択肢は何か

【事例】 ランチ営業の業界定義はどう絞るべきか?

同じ「東京駅周辺のランチ」であっても、顧客の利用目的によって定義すべき業界と競合構造はまったく異なります。

顧客の目的・利用シーン重要となる競争資源競合・比較対象となるプレイヤー競合しないもの
平日の昼に手早く食事を済ませたいサラリーマン駅近・オフィス街の立地、提供スピード、低価格マクドナルド、すき家、居酒屋のスピード定食ランチ、立ち食い蕎麦、コンビニ弁当ゆったりした空間のカフェ、高級イタリアン
会話を大事にしながらゆったり過ごしたい主婦・リモートワーカー居心地の良い空間、座席の広さ、接客、滞在時間カフェ、ホテルラウンジ、個室のあるレストランファストフード、立ち食い店、牛丼チェーン

手早く済ませたい層を狙うなら、商圏は徒歩数分圏内に極めて狭まり、スピードと立地を奪い合う激しい消耗戦になります。一方でゆったり過ごしたい層を狙うなら、商圏は多少広がり、ファストフードは競合から外れ、空間価値をめぐる戦いに変わります。

最初は狭すぎる設定を避け、少し広めの視点から始めて「誰向けのどんな目的か」で徐々に絞り込んでいくアプローチが実務上お勧めです。

ファイブフォース分析を構成する5つの競争要因

ファイブフォース分析では、業界の収益性を決定づける5つの競争要因を分析します。それぞれの要因を深掘りする際の実務的な着眼点を解説します。

1. 既存企業間の競争(業界内の敵対関係)

基本的な考え方:同じ業界内の企業同士による価格やシェアを巡る争いです。一般的には、競合企業が多いほど値下げ競争が起きやすく、収益性が下がるとされています。

ポイント

1

競合が多い=競争が激しいとは限らない

市場全体が成長しており、各社が十分に差別化できていれば、競合が多くても健全に共存できます。逆に、市場が縮小傾向で商品が同質化(コモディティ化)し、固定費や撤退障壁が高い業界では、プレイヤーが数社しかいなくても過酷な価格競争に陥ります。

ポイント

2

顧客だけでなく何を奪い合っているか(競争資源)を見る

奪い合いの対象は顧客シェアだけではありません。検索順位、主要な広告枠、店舗の一等地、安定した仕入れルート、あるいは「優秀な専門人材(マーケターやエンジニア)」そのものが奪い合いの対象になります。自社がどの経営資源を巡って消耗しているのかを突き止めることが本質です。

ポイント

3

1回埋めて終わりにしない

業界内の競争は一番分析しやすい要素ですが、ここで洗い出した課題は「買い手」「代替品」「売り手」など他の要因と必ず連動しています。他の項目を埋めた後に行き来しながら、業界全体の力関係を再点検することが欠かせません。

2. 新規参入の脅威

基本的な考え方:新しい企業が市場に参入してくるリスクです。初期投資額や法規制、専門技術などの参入障壁が低い業界ほど新規参入が増え、脅威が高まります。

参入障壁と成功障壁を分ける

新規参入を分析する際に最も混同されやすいのが、始めやすさと事業として成功・継続できるかの違いです。

たとえば、Webマーケティング、コンテンツ制作、コンサルティングなどの領域は、生成AIの急速な普及やツールの進化によって、多額の初期投資を必要とせず誰でも参入できるようになりました。つまり参入障壁は低い状態です。 しかし、参入した事業者が「顧客から深い信頼を獲得する」「契約を継続させる」「実際に成果を出し続ける」といったハードル、すなわち成功障壁は依然として高いままです。

単に参入者が増えそうだから危険だと結論づけるのではなく、参入は容易だが、自社のコアな立ち位置まで到達・継続できるプレイヤーはどの程度いるのかという成功障壁まで見極める必要があります。

3. 代替品の脅威

基本的な考え方:自社とは異なる製品やサービスで、同じ顧客ニーズが満たされてしまうリスクです。

商品ではなく、顧客は何の目的にお金を払っているのかに立ち返る

代替品を分析する際、多くの方が自社製品と似た直接の競合商品ばかりを探してしまいます。しかし、本質的な代替品を捉えるためには、商品カテゴリーではなく顧客は何の目的を果たすためにお金を払っているのかという動機に戻る必要があります。

  • 参考例
    • 映画館の場合:顧客の目的が「休日の可処分時間を楽しく過ごしたい」であれば、代替品は隣町の映画館だけでなく、「Netflix」「YouTube」「家庭用ゲーム」「日帰り旅行」など、休日の過ごし方全般が強力な代替品になります。
    • 学習塾の場合:目的が「高校受験の合格」であれば、他塾だけでなく「オンライン学習サービス」「YouTubeの解説動画」「AI自習ツール」などが代替品になります。一方で、目的が「子どもに学習習慣を身につけさせたい」であれば、代替品はまた別のサービスへと変わります。

このように、最初の業界定義や顧客の目的の捉え方がズレると、警戒すべき代替品の見立てそのものが狂ってしまいます。

代替品の脅威は6つの条件で判断する

単に代替品が存在するだけでなく、その代替品が自社にとってどれほど脅威となるかは以下の6つの条件で判断します。

  1. 代替品の数:選択肢が市場に豊富にあるか
  2. 価格(コストパフォーマンス):自社より圧倒的に安い、あるいは無料か
  3. 利便性:時間や場所を選ばず手軽に利用できるか
  4. 提供価値の質:同等以上の満足度や成果を得られるか
  5. 乗り換えコスト(スイッチングコスト):他手段へ切り替える心理的・金銭的負担が低いか
  6. 信頼性:顧客が安心して選べる実績や信用があるか

特に近年では、AIやオンライン化といった技術革新によって「圧倒的に安く、手軽な代替手段」が突如として業界の外から登場するケース(例:塾や家庭教師の代わりに、対話型AIやオンライン教材で学ぶなど)が頻発しています。

このような代替品が上記の6つの条件(低価格・高利便性・低スイッチングコストなど)を満たしている場合、自社から顧客が一気に流出するリスク=代替品の脅威が高いと判断します。

4.買い手の交渉力

基本的な考え方:顧客が持つ価格や取引条件への影響力です。大口顧客が存在する場合や、他社へ切り替えるコスト(スイッチングコスト)が低い場合、買い手の交渉力が強まり、値下げ圧力によって自社の利益が圧迫されます。

売上の上げやすさを見極め、ブランド力で価格決定権を握る

買い手とは、一般消費者(BtoC)だけでなく、メーカーにとっての卸売業者やスーパー、ECモール(BtoB)なども含まれます。ネット上で簡単に相見積もりや価格比較ができ、競合との違いが分かりにくい市場では、買い手の力は非常に強くなります。

この買い手の交渉力を抑え込み、自社主導で価格を設定する(=売上を上げやすくする)ための武器が強いブランド力と独自技術です。

  • ハーゲンダッツの例
    • 最終消費者から圧倒的な支持(強い需要)を作ることで、コンビニやスーパーなどの小売店に対して「置かないわけにはいかない」という力関係を築き、安売りを防いでいます。

高くてもこれが欲しいと思わせる仕組みを作ることが、買い手の交渉力を弱める決定打となります。

5. 売り手の交渉力

基本的な考え方:原材料や部品などを供給するサプライヤーの交渉力です。供給元となる会社が少ない場合や希少性が高い場合、仕入れ値や利用料が引き上げられ、自社の利益が圧迫されます。

仕入れ原価だけではなく、プラットフォームや専門人材も強大な売り手

多くの現場では、売り手=原材料の仕入れ業者と限定して捉えがちです。しかし、コストの下げやすさ(=手元に利益を残す力)を考える上では、以下の2つを「売り手」として捉える視点も重要です。

  1. 巨大プラットフォーム(Google、Meta、ホットペッパービューティー、大手ECモールなど)
    • 集客や事業基盤を特定メディアに依存している業界(例:美容サロン業界におけるホットペッパー)では、プラットフォーム側が手数料の値上げや掲載ルールの変更を発表しても、店舗側は拒否することが極めて困難です。実質的にプラットフォームが強い交渉権を握っています。
  2. 専門人材(労働市場そのもの)
    • 優秀なエンジニア、デザイナー、マーケターなど、採用市場における希少人材も自社に対する強力な供給者(売り手)です。人材不足による採用費や人件費の高騰は、原材料費の上昇と同様に自社の収益を直接圧迫します。

単なる材料費の変動だけでなく、自社が出ていくお金(コスト)をどこまでコントロールできるかを包括的に見渡すことが重要です。

5つの要因から構造を読み解く:成長性と収益性の分離

5つの要因を洗い出した後、単に「買い手が強い」「参入が中くらい」と並べるだけでは戦略になりません。この力関係を俯瞰し、業界全体の利益構造を評価します。

市場の成長性と自社の収益性は全くの別物である

5つの要因を評価する際、多くの解説記事で見落とされがちであり、現場で最も混同されやすいのが「成長性」と「収益性」の違いです。

  • 成長性:その市場全体の売上規模がどれだけ拡大しているか(市場の大きさ・伸び)
  • 収益性:その市場の中で、各プレイヤーがどれだけ利益を手元に残しやすいか(儲かりやすさ)

ファイブフォース分析で見るべき本質は、市場が伸びているかどうか(成長性)に惑わされず、構造的に手元へ利益を残せる仕組みがあるか(収益性)を冷静に見極めることにあります。市場の拡大スピードと自社の利益の残りやすさを切り離して捉えることこそが、勝つための戦略を導くための第一歩です。

ファイブフォース分析の結果をどう自社の戦略に落とし込むか?

5つの要因を洗い出し業界全体の利益構造が見えてきたら、最後に行うべきは「自社はどこに立てば利益を確保できるのか?」というポジショニングの決定です。

分析結果を見て「どの要因も強くて、この業界では勝てそうにない」と悲観的になる必要はありません。ファイブフォース分析の目的は、市場の厳しさを嘆くことではなく、自社が構造的に有利な立ち位置を見つけ出すことにあります。

具体的には、以下の4つの方向性から自社の打ち手を検討します。

  1. 買い手の交渉力をブランドや独自技術で抑え込む
    • 価格比較されやすい一般的な商品から抜け出し、「他社では代えが利かない」「高くてもこれが欲しい」と顧客から指名される仕組みを作り、価格決定権を自社の手に取り戻す。
  2. 激しい競争が起きている領域から少しズラす
    • 参入が容易でライバルが乱立している単なる作業代行などのレッドオーシャンを避け、AIや競合が簡単には真似できない上流の戦略設計や個別カスタマイズへ軸足を移す。
  3. 特定プラットフォームへの依存度を下げる
    • 特定の媒体や集客元(売り手)に依存しきっている状態から、自社独自の顧客接点(指名検索、リピート施策)を育て、中間マージンや料金変更の影響を受けにくくする。
  4. 不確実な未来に対して、複数のシナリオを用意しておく
    • PEST分析で捉えたマクロ変化は、1つの未来に決め打ちするのではなく、「もし内製化が進んだらどう動くか」「もしツールの統合管理ニーズが高まったらどうするか」といった複数のシナリオを想定し、状況に応じて舵を切れる柔軟な体制を整えておく。

まとめ:自社が利益を出し続けられる構造的優位性を見つけよう

  • 顧客の利用目的に立ち返って業界の範囲を正しく定義する
  • 表面的な競合だけでなく、買い手・売り手・参入者・代替品を含めた5つの力関係を捉える
  • PEST分析と行き来しながら、まだ業界に反映されていない未来の変化を先回りして読む
  • 市場の成長性に惑わされず、手元に利益を残せる構造(収益性)を見極める

これらを通じて業界構造を把握することで、初めて自社がどの土俵で戦えば、長期的に利益を出し続けられるのかという確かな戦略が見えてきます。

まずは自社の置かれている市場を定義し、5つの要因と利益の行き先を書き出すところから始めてみてください。自社が構造的に有利に戦えるポジションを見つけることこそが、激しい変化の中で生き残り利益を生み出し続けるためのポイントとなります。

この記事を書いた人

伊藤麗生

伊藤麗生
イトウ

(株)BELIFE 営業・オウンドメディア担当しています。 小学校から大学までサッカー一筋で打ち込み、全国高校サッカー選手権大会への出場を果たすなどプロを目指して活動。社会に視野を広げる中で起業を志し、大学時代に個人事業主としてアウトドアサウナを開業。現在は温浴施設の運営を手がけながら、温浴向けデバイスの開発・販売に向け精力的に活動中。スターバックスなどの飲食店でのアルバイト経験も併せ持ち、スポーツ・店舗経営・プロダクト開発・サービス現場という多角的な視点を活かした、深みとリアリティのある記事を執筆する。