SWOT分析・クロスSWOT分析とは?|外部環境から戦略オプションをつくる進め方

この記事でわかること
- SWOT分析・クロスSWOT分析の本質
→ 外部環境の中で自社の武器と足かせを整理し、戦い方の選択肢をつくる考え方 - 4つの要素と4つの戦略の正しい書き方
→ 根拠のある強み・弱みの出し方と戦術に飛ばない戦略オプションの出し方 - 実務で成果を出す7ステップ
→ 前工程の分析を統合し、3C分析へつなげる進め方
SWOT分析・クロスSWOT分析とは?

SWOT分析とは、外部環境に対して自社が何を持っているかを整理するフレームワークです。クロスSWOT分析では、その整理結果を掛け合わせてどう戦うかの選択肢をつくります。
| 比較項目 | SWOT分析 | クロスSWOT分析 |
|---|---|---|
| 目的 | 自社を取り巻く状況を整理する | 状況を掛け合わせて戦略オプションを考える |
| 主な対象 | 強み・弱み・機会・脅威 | 強み・弱みと機会・脅威を組み合わせた4つの戦略 |
| 得られるもの | 戦略を考えるための分析材料 | 戦い方の選択肢となる戦略オプション |
| 次の工程 | クロスSWOT分析へ進む | 戦略オプションを評価し、3C分析で検証する |
まずは2つの分析が戦略づくりの中でどこに位置するのか、なぜセットで行うのかを確認しましょう。
マーケティング戦略の流れにおける位置づけ
弊社では、マーケティング戦略を次の流れで組み立てています。SWOT分析とクロスSWOT分析は、外部環境の分析と自社の戦略づくりをつなぐ位置にあります。
① 外部環境を把握する
- PEST分析:社会全体がどう変わっていくかというマクロ環境を把握する
- ファイブフォース(5Forces)分析:業界構造がどう変わっていくかを把握する
- 市場調査(定量調査・定性調査):実際の市場や顧客がどうなっているかを確認する
② 自社の戦い方を考える
- SWOT分析:その環境に対して、自社が何を持っているかを整理する
- クロスSWOT分析:どう戦うかの選択肢をつくる
③ 戦略を検証し、決める
- 3C分析:選択肢が本当に勝ち筋になるかを検証する
- STP分析:狙う市場と自社の立ち位置を決める
なお、この流れはSWOT分析の前に顧客や競合の情報を調べないという意味ではありません。市場調査や競合調査で得た情報はSWOT分析にも活用します。そのうえで、クロスSWOT分析で生まれた戦略オプションについて、3C分析を通じて顧客価値・競争優位性・自社での実現可能性を改めて検証します。
【関連記事】PEST分析とは?|事実・傾向・仮説の深掘りから顧客変化・ブランド方針へ繋げる方法
SWOT分析とクロスSWOT分析をセットで行う理由
SWOT分析は、自社の現状を整理するための分析です。しかし、整理しただけでは戦い方は見えてきません。そこで、整理した4つの要素をどう戦うのかという問いに変える役割を担うのがクロスSWOT分析です。2つの分析をセットで行うのはこのためであり、SWOT分析はクロスSWOT分析の材料をそろえる工程といえます。

SWOT分析は、良いところと悪いところを並べるだけでは戦略につながりません。弊社では、外部環境が変わる中で自社の何が武器になり何が足かせになるかを整理する分析だと考えています。クロスSWOT分析で出た案も、評価と検証を経て初めて戦略になります。
SWOT分析の4つの要素と書き方のポイント
SWOT分析は表の形がシンプルなぶん、誰でも手軽に書けてしまうフレームワークです。ここでは4つの要素の意味を確認したうえで、戦略に使えるSWOT分析にするための書き方を解説します。
SWOT分析で整理する4つの要素
SWOT分析では、内部環境と外部環境、プラス要因とマイナス要因の2つの軸で自社を取り巻く状況を整理します。強み(Strength)・弱み(Weakness)・機会(Opportunity)・脅威(Threat)の頭文字をとってSWOTと呼ばれます。

強み(Strength):自社が持つ、プラスに働く内部要因
弱み(Weakness):自社が抱える、マイナスに働く内部要因
機会(Opportunity):外部環境にある、自社にプラスに働く変化
脅威(Threat):外部環境にある、自社にマイナスに働く変化
SWOT分析で考える順番
SWOT分析では、機会と脅威を先に整理してから強みと弱みを考えることをおすすめします。強みと弱みは自社単体では決められず、外部環境との相対的な関係で決まるためです。たとえば店舗数が多いことは、全国対応を求める市場では強みになりますが、小規模な専門店との競争では固定費の重さから弱みにもなります。また、内部から考え始めると自社の製品は高品質だといった独りよがりな強みが並びがちです。外部環境を正しく把握してから自社を見ることで、こうした思い込みを防ぐことができます。
機会と脅威の書き方
機会と脅威は、一から考え始める必要はありません。PEST分析やファイブフォース(5Forces)分析、市場調査で明らかになった外部環境の変化を、自社にとって機会なのか脅威なのかで整理します。
▼ 機会と脅威の定義
機会とは自社が利用できる可能性のある変化や余白、脅威とは自社ではコントロールできないマイナスの変化です。どちらも外部で起きている事実を書く場所であり、市場シェアを伸ばすといった目標は入りません。また、営業力が弱いといった自社の課題は脅威ではなく弱みに入ります。
▼ 事実と評価の区別
外部環境の変化には、機会にも脅威にもなるものがあります。そのため、事実と評価を分けて考えることが大切です。
たとえば、コンテンツ制作サービスと戦略支援サービスを提供する会社で生成AIの普及を整理すると、次のようになります。
- 事実:生成AIによってコンテンツ制作のコストが下がっている
- 評価①:制作サービスにとっては、AIに仕事を代替されかねないため脅威になる
- 評価②:戦略支援サービスにとっては、AIを活用して業務を効率化できるため機会になる
このように事業によって評価が分かれる場合は、機会と脅威の両方に書いておきます。1つの事業の中でどちらに書くか迷った場合は、影響の強い方に書きます。
強みと弱みの書き方
強みと弱みは内部環境なので、外部環境を分析したPEST分析やファイブフォース(5Forces)分析からは持ってこられません。整理した機会と脅威を前提に、自社を新たに見ていく必要があります。
▼ 強みの判断基準
接客が丁寧といった言葉を並べるだけでは、誰にとって何と比べて強いのかが分かりません。強みかどうかは、次の3つで確認します。
- 顧客にとって価値があるか
- 競合より優れているか
- 継続して発揮でき、競合に真似されにくいか
また、得意なことと強みは別物です。たとえば、SNS運用が得意でも競合も同じレベルでできているなら強みにはなりません。反対に、自社では当たり前すぎて意識していなくても、顧客が高く評価していて競合が真似しにくいものは立派な強みになります。
▼ 弱みの範囲の決め方
会社にできないことは無限にあるため、すべてを弱みとして書く必要はありません。弱みとして書くのは、狙う市場や戦略に対して成果を妨げる内部要因です。たとえばECで全国展開を目指す企業にとって、Webマーケティングの人材がいないことは成果に直結するため弱みです。一方で、店舗の接客担当者が少ないことはEC中心の戦略には影響しないため、弱みとして書く必要はありません。

強みと弱みは、経営者が頭の中だけで整理すると思い入れに引っ張られてしまいます。弊社では、顧客インタビューや失注理由、社員へのヒアリングなどの根拠とセットで判断するようにしています。一次情報や二次情報をもとに、市場の中で相対的に評価することが大切になります。
クロスSWOT分析の4つの戦略と戦略オプションの出し方
クロスSWOT分析では、SWOT分析で整理した内部環境と外部環境を掛け合わせて戦略オプションを洗い出します。ここでは4つの戦略の考え方と、実務で使える戦略オプションを出すためのポイントを解説します。
クロスSWOT分析で掛け合わせる4つの戦略
強み・弱みと機会・脅威を掛け合わせた4つの組み合わせから戦略を考えます。ここでは、地域で複数の店舗を展開するシニア向けの生活用品店を例に、4つの戦略を見ていきます。

SO戦略(強み × 機会):攻めの最大化
強みを使って機会を取りに行く、最も攻めの戦略です。
- 強み:シニア層への接客の専門性
- 機会:高齢者市場の拡大
- 戦略オプション:接客の専門性を生かし、シニア層が相談しながら安心して商品を選べる専門店としてのポジションを確立する
WO戦略(弱み × 機会):弱みの補完
機会を逃さないために、弱みを補う戦略です。弱みをすべて直す必要はなく、大きな機会を取るうえで邪魔になる弱みから優先して改善します。事業への影響が小さい弱みは、後回しにしても構いません。
- 弱み:EC運営の人材がいない
- 機会:EC市場の拡大
- 戦略オプション:外部パートナーなどを活用してEC運営の人材不足を補い、店舗商圏外の顧客にも商品を届けられる販売基盤を構築する
ST戦略(強み × 脅威):守りながらの差別化
強みを使って脅威をかわす、または弱める戦略です。脅威に正面から対抗するのではなく、強みで差別化して自社を守ります。
- 強み:シニア層への接客の専門性と地域の顧客からの信頼
- 脅威:低価格を売りにする競合の参入
- 戦略オプション:地域で築いた信頼と接客の専門性を軸に、価格ではなく相談のしやすさや購入後の安心で比較されるポジションを築く
WT戦略(弱み × 脅威):致命傷の回避
弱みと脅威が重なって致命傷になることを防ぐ戦略です。
- 弱み:特定の仕入れ先への依存
- 脅威:物価高騰や国際情勢による商品供給の不安定化
- 戦略オプション:特定の仕入れ先への依存度を下げ、供給が不安定になった場合でも主力商品を継続して販売できる調達体制を構築する

4つの戦略の中では、前向きなSO戦略が一番よいと思われがちです。しかし、半年後に資金が尽きる可能性があるなど、会社が倒れかねない弱みと脅威の組み合わせがあるなら、先にWT戦略に手を付けるべきです。地味で後回しにされやすいからこそ、WT戦略は必ず確認してください。
戦略オプションの出し方
クロスSWOT分析は、戦略を1つに決めるためではなく、戦略の選択肢を広げるためのフレームワークです。実務で役立つ戦略オプションを出すには、3つのポイントがあります。
▼ 掛け合わせる組み合わせの選び方
すべての要素を機械的に掛け合わせる必要はありません。強み・弱み・機会・脅威がそれぞれ5個ずつあれば、組み合わせは100通りにもなります。強み2と機会1を掛け合わせたS2×O1、弱み1と脅威2を掛け合わせたW1×T2のように、戦略を左右する重要な組み合わせだけを探しましょう。
▼ 組み合わせの読み解き方
S1×O1だからこの戦略、というように自動的に答えが出るわけではありません。クロスSWOT分析は計算式ではないからです。組み合わせを見ながら、そこから何が言えるのか、どんな戦い方があり得るのかを考える必要があります。
▼ 戦略オプションの粒度
よくある失敗が、クロスSWOT分析の段階で具体的な施策まで決めてしまうことです。若年層市場の拡大という機会に、自社の専門家ネットワークという強みを生かす場合を考えます。
- 悪い例:Instagramで専門家による情報発信を始める
- 良い例:若年層向けの専門ブランドを確立する
Instagramを使うかどうかは戦術の話であり、もっと後の段階で決めることです。クロスSWOT分析で決めるのは、どこでどう勝つかという方向性までです。
分析をさらに深めるための2つの視点
ここまでの内容を押さえれば、戦略に使えるSWOT分析・クロスSWOT分析ができます。さらに分析を深めたい場合は、強みを時間の流れの中で見直す2つの視点を取り入れてみましょう。
強みが今も成立しているかの確認
20年前から地域で有名という強みがあっても、若年層にほとんど知られていなければ、地域でのブランド力を今も強みとして扱ってよいかは疑問です。メイドインジャパンを売りにしていても、競合が次々と同じように打ち出し始めれば、それは強みではなく当たり前になります。昔の成功体験をそのままSWOT分析に残さず、今の市場でまだ成立しているかを定期的に確認しましょう。
3年後も強みであり続けるかの検討
PEST分析やファイブフォース(5Forces)分析では、現在の状況だけでなく将来どうなっていくかという可能性まで見ていきます。その環境変化がこのまま進んだとき、今の強みが3年後も強みといえるかを考えてみましょう。たとえば生成AIの普及でコンテンツを制作する力の希少性が下がれば、今は強みでも数年後には普通の能力になるかもしれません。反対に、顧客との関係性や独自のデータ、ブランドのコミュニティといったものは、今後さらに価値が上がる可能性があります。
実務で成果を出すSWOT分析・クロスSWOT分析の進め方

ここまでの内容をふまえて、実務でSWOT分析・クロスSWOT分析を進める流れを7つのステップにまとめます。
ステップ
1
機会と脅威を前工程の分析から抜き出す
PEST分析やファイブフォース(5Forces)分析、市場調査(定量調査・定性調査)の結果から、自社に影響する外部環境の変化を抜き出します。そのうえで、事実と評価を分けて機会と脅威に整理します。
ステップ
2
環境に対する強みと弱みを整理する
ステップ1で整理した機会と脅威を前提に、強みと弱みを書き出します。強みは3つのチェック項目で確認し、弱みは狙う市場や戦略に対して成果を妨げるものに絞ります。あわせて、強みが今の市場でも成立しているか、3年後も強みであり続けるかを確認します。
ステップ
3
各項目に根拠を書く
書き出したすべての項目に、なぜそう言えるのかの根拠を添えます。顧客インタビューや売上データなどの一次情報、調査レポートなどの二次情報をもとに、市場の中で相対的に評価できているかを確認しましょう。
ステップ
4
重要な項目を3〜5個に絞る
項目はたくさん出すほど分析の精度が上がるわけではありません。今後の戦略を左右する重要な項目に絞り、それぞれ3〜5個程度にまとめます。絞った項目にS1・S2・S3、W1・W2のように番号を付けておくと、次のクロスSWOT分析で組み合わせを扱いやすくなります。
ステップ
5
4つの組み合わせから戦略オプションを出す
SO・WO・ST・WTの4つの組み合わせから、戦略オプションを洗い出します。重要な組み合わせだけを掛け合わせ、施策ではなくどこでどう勝つかの方向性として書くことがポイントです。会社にとって致命傷になり得るWTの組み合わせがないかも、必ず確認しましょう。
ステップ
6
評価軸で戦略オプションに優先順位を付ける
クロスSWOT分析で8個ほどの戦略オプションが出たとしても、すべてを実行するのは現実的ではありません。そこで、次の6つの評価軸で比較し、優先順位を付けます。
- 目的への適合性:自社の目的や目指す方向性に合っているか
- 市場性:十分な市場規模や成長性があるか
- 優位性:競合に対して優位に立てるか
- 顧客価値:顧客にとって価値があるか
- 実行可能性:自社の人材・資金・期間で実行できるか
- リスク:失敗した場合の影響や不確実性はどの程度か
クロスSWOT分析で選択肢をつくり、意思決定のプロセスで選ぶという流れです。
【関連記事】マーケティングにおける意思決定について詳しく解説
ステップ
7
3C分析で確認したい仮説を書く
優先順位の高い戦略オプションについて、次の3C分析で確かめたい仮説を書き出します。たとえばシニア層が安心して商品を選べる専門店を目指すという戦略オプションであれば、価格が高くても専門的な接客を求めるシニア層が一定数いるのではないか、といった仮説です。仮説を言葉にしておくことで、3C分析で何を確かめればよいかが明確になります。
クロスSWOT分析から3C分析へのつなげ方
クロスSWOT分析で出た戦略オプションは、この市場でこの強みを使えば戦えるのではないかという戦略の仮説になります。まだ検証されていないため、そのまま実行に移すのは危険です。そこで弊社では、クロスSWOT分析の次に3C分析を行い、仮説として選んだ戦略オプションを次の3つの視点から解像度高く確認します。
- 顧客(Customer):本当に顧客にとって価値があるか
- 競合(Competitor):競合と比べて勝てるか
- 自社(Company):自社で実現できるか
クロスSWOT分析と3C分析は似た要素を扱うため混同されがちですが、役割ははっきり異なります。クロスSWOT分析で戦い方の方向性を広げ、3C分析で勝ち筋を絞り込むという関係です。2つを分けて考えることで、選択肢を狭めすぎずに根拠のある戦略にたどり着けます。3C分析で勝ち筋が見えたら、次はSTP分析で狙う市場と自社の立ち位置を決めていきます。
まとめ:SWOT分析・クロスSWOT分析で戦略の選択肢を広げる

SWOT分析は、自社の良いところと悪いところを4つのマスに書き出すための作業ではありません。外部環境を先に把握し、その環境の中で自社の武器と足かせを根拠とともに見極める分析です。そしてクロスSWOT分析は、その武器と環境を掛け合わせて戦い方の選択肢を広げるためのフレームワークです。出てきた戦略オプションは評価軸で比較し、3C分析で検証して初めて戦略になります。PEST分析やファイブフォース(5Forces)分析からSTP分析までを一続きの流れとして捉え、段階を踏んで分析を進めることで、自社が本当に勝てる道筋が見えてきます。

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