• ブログ

最終更新日:2026.10.08

顧客起点マーケティングとは?|顧客視点との違いや注意点を解説

顧客起点マーケティングとは?

顧客起点マーケティングとは、実際の顧客の行動や状況、感情、選択といった事実(一次情報)を起点にして、誰にどんな価値をどのように届けて、どういうマーケティングをしていくのかを考えることです。
 

【弊社関連記事】一次情報とは?マーケティングで成果につなげる集め方と活用方法

顧客起点マーケティングと顧客視点マーケティングの違い

マーケティングを議論する際、顧客起点と顧客視点という言葉は明確に区別して使用します。この2つの違いは、事実か仮説かという点にあります。顧客視点とは、顧客になったつもりで考えることです。「お客様はこう考えるだろう」「こうすれば喜ぶだろう」といった、推測や仮説から思考が始まります。一方、顧客起点とは、実際の顧客の声、行動、感情といった一次情報を起点にすることです。「お客様は実際にこう言っていた」「こういう行動を取っていた」「ここで迷っていた」という事実から出発します。

顧客視点から入るアプローチ自体が悪いわけではありませんが、それはあくまで仮説です。その仮説を事実によって確認・証明し事実を出発点にして組み立てていくことこそが、顧客起点マーケティングの本質です。

顧客起点マーケティングでエンド顧客から見る重要性

BtoBビジネスや支援業において、直接やり取りをするクライアント企業の意向だけを見てマーケティングを行っても、本質的な成果には繋がりにくいと考えています。支援先の売上や利益が持続的に拡大するかどうかは、最終的にエンド顧客(最終消費者)が価値を感じ、選んで購入してくれるかどうかで決まるからです。

たとえば塾のビジネスを考えてみましょう。お金を払って契約するのは保護者ですが、実際に授業を受けてサービスを享受するのは子ども(エンド顧客)です。「お金を払うのは保護者だから」と保護者の顔色だけを見て、子どもを置き去りにした指導を行えば、子どもは通うのが嫌になり、結果として退塾に繋がってしまいます。子どもの人生や成績に本気で向き合い、「通いたい・勉強したい」と思える価値(エンド顧客の満足)を提供して初めて、保護者も納得して継続し、塾という事業の成果が生まれます。

どのようなビジネス構造であっても、選択の主導権は常にエンド顧客にあります。エンド顧客を置き去りにした集客テクニックや営業手法は、一時的な対症療法にしかなりません。

エンド顧客の状態による起点の変化

一言にエンド顧客と言っても、その対象がどの状態にいるのかによって、収集すべき一次情報や顧客起点の考え方は変わります。

どの状態のエンド顧客の事実を起点にするかを整理し、自社の目的に応じて一貫した戦略になるように組み立てていきましょう。

【弊社関連記事】マーケティングの目的とは?「目的・目標・手段」の思考整理と手段の目的化を防ぐ方法

エンド顧客→担当者→経営者

顧客起点マーケティングは、顧客の都合だけを優先して会社の利益を無視するようなものではありません。エンド顧客、現場担当者、そして経営者という3つの立場におけるそれぞれの目的を、成立させるために行うものです。

ビジネスには3つの視点と目的が存在します。失敗せず自分に合う商品やサービスを選びたい「顧客の目的」、集客や価値提供を成功させ、成果を出したい「担当者の目的」、そして売上や利益を伸ばし会社を存続・拡大させたい「経営者・企業の目的」です。どれか一つでも欠けていれば、事業として持続しません。

ここで重要なのが思考と行動の順番です。まず最初に顧客が出発点となり、自社の商品やサービスに深く価値を感じて選んでくれる状態を作ります。すると、担当者は売り込みではなく価値提供による本質的な集客や成果を生み出すことができるようになり、その成果が最終的に会社に利益として残り、事業が継続していくという好循環が生まれます。

エンド顧客を置き去りにしたまま、経営者が「利益を伸ばしたいから数字を上げろ、あげれば給料を上げる」と順番を飛ばしても、その成果は一時的なものにしかなりません。だからこそ、すべての好循環を生むための最初のスタート地点として、エンド顧客を見る必要があります。

顧客起点ではないマーケティングについて

マーケティングにおける主な起点

  1. 商品起点(プロダクト起点)
    • 概要:「素晴らしい商品や技術ができた(ある)ので、これを誰にどう売るか」から考えるアプローチ。
    • 特徴:技術革新(プロダクトアウト)や強力な独自商品がある場合に多く見られます。
  2. 競合起点
    • 概要:「競合他社がTikTokやInstagramを始めたから」「競合が新しい価格帯を出したから」といった、ライバルの動向をきっかけに考えるアプローチ。
    • 特徴:市場でのポジショニング修正や、後発での市場参入時によく使われます。
  3. 手法・手段起点
    • 概要:「SEOを強化したい」「生成AIを使った集客をやりたい」「TikTokを活用したい」といった、具体的な施策やチャネルから入るアプローチ。
    • 特徴:新しいトレンドやプラットフォームの波に乗る際に発生しやすい切り口です。
  4. 経営者・事業起点(自社都合起点)
    • 概要:「会社の売上・利益を伸ばしたい」「自社の『国産・安心品質』というこだわりを伝えたい」「社内のこのリソースを活用したい」といった、自社の内情や方針から入るアプローチ。
    • 特徴:企業のミッション・ビジョンや経営課題がスタート地点となります。
  5. 市場・トレンド起点
    • 概要:「世間的にSDGsへの関心が高まっている」などの外部環境の変化から入るアプローチ。
    • 特徴:社会的な大きな潮流に合わせて事業機会を見つける際に役立ちます。

最後は顧客の事実に合致させる

どの起点からスタートすること自体も、マーケティングのきっかけとしては問題ないと考えています。重要なのは、どの起点からスタートしたとしても、最終的には顧客の現実・事実とすり合わせ、合致させることです。

顧客起点の注意点

顧客起点マーケティングを推進する際、多くの人が陥ってしまう代表的な罠が2つあります。

顧客の事実が正解だと思い込んでしまう

1つ目の罠は、顧客の言ったことが正解であり、直接「何が欲しいか」を聞けばいいと思い込むことです。しかし、顧客は正解を持っていません。人から突然「あなたの価値観を教えてください」と聞かれても即答できないのと同じで、顧客自身も日々の無意識の変化や無意識の体験・感情から判断を形成しているため、自分でも本当の答えが分からないことがほとんどです。そのため、顧客の発言や意見をそのまま真似して施策に採用(鵜呑み)しても成果には繋がりません。重要なのは顧客に答えを教えてもらうことではなく、実際に顧客が取った行動や選択の背景を探り、顧客を深く理解することです。

セグメントだけで判断してしまう

2つ目の罠は、確認していない一般論(想像)で進めてしまう危険性です。「30代女性だからSNSを見るだろう」「高齢者だからデジタルは苦手だろう」といった浅い思い込みで思考を止めてしまうことがこれに該当します。確認していない世間の一般論は、自社の顧客の事実ではありません。

「30代女性」「浜松市在住」といった属性(セグメント)だけで顧客を捉えようとすると、情報が浅くなり、結果としてそのセグメントの人はこう動くだろうという想像や一般論に収まってしまいます。重要なのは属性で区切るのではなく、個別のシチュエーション(状況)や振る舞い・判断軸という深い一次情報(N=1)を捉え、それを積み重ねて全体量(分量)として検証していくことです。

まず、たった一人の具体的な顧客(N=1)がどんな状況に置かれ、何に悩み、何と比較し、なぜそれを選んだのかという背景や行動の事実を徹底的に深掘りし、解像度の高い強固な仮説を作ります。そしてその仮説が出来上がった後に、そのN=1と同じ状況や課題を抱えている人が市場にどれくらい存在するのか(分量)を定量データや市場調査で検証し、広げていきます。

1人の意見を全顧客の意見だと思い込むことも危険ですが、データを恐れて1人の生々しい事実を見ないことも同様に危険です。N=1で深く事実を捉え、データで市場の広がりを調べるという両輪を回すことが重要です。

顧客起点を始める基本項目

顧客インタビューや調査を行う際、聞き出し、収集すべき一次情報(事実)の具体的基準となるのが以下の6つの基本項目です。これらを漏れなく把握することで、顧客理解の解像度を引き上げます。

  1. どんな状況に置かれていたか(シチュエーションや日常の文脈)
  2. 何に困っていたか(具体的な課題や発生した問題)
  3. 実際に何をしたか(取った行動や検索したキーワード)
  4. 何と比較・検討したか(迷った競合商品や代替手段)
  5. 何が不安や障壁になったか(購入や導入を躊躇した理由)
  6. 最後に何が決め手になったか(最終的に背中を押した判断軸)

まとめ

顧客起点マーケティングを実践に移す際は、顧客の事実を出発点にしながら、段階を追って思考を組み立てていくことが重要です。

目的を明確にした上でエンド顧客が置かれていたシチュエーションや選択の背景という一次情報(事実)を深掘りし、本当の課題を捉えます。その把握した事実に基づいて、ターゲットとなる顧客に対してどんな価値を提供するのかを明確に定義します。

最後に、定義した価値を届けるために最も有効な手段や施策(SEO、SNS、広告、商品・サービスの改修など)を決定し、実行に移していきます。商品アイデアや最新の手法、あるいは競合の動きといった手段から思考がスタートした場合であっても問題ありません。大切なのは、実行する前の段階で必ず立ち返り、「実際の顧客の事実はどうなっているのか」とすり合わせを行うことです。

顧客の声(意見)をそのまま真似して鵜呑みにするのではなく、行動の背景にある事実を正しく理解し、エンド顧客、現場担当者、そして会社全体に持続的な好循環を生み出していきましょう。

この記事を書いた人

伊藤麗生

伊藤麗生
イトウ

(株)BELIFE 営業・オウンドメディア担当しています。 小学校から大学までサッカー一筋で打ち込み、全国高校サッカー選手権大会への出場を果たすなどプロを目指して活動。社会に視野を広げる中で起業を志し、大学時代に個人事業主としてアウトドアサウナを開業。現在は温浴施設の運営を手がけながら、温浴向けデバイスの開発・販売に向け精力的に活動中。スターバックスなどの飲食店でのアルバイト経験も併せ持ち、スポーツ・店舗経営・プロダクト開発・サービス現場という多角的な視点を活かした、深みとリアリティのある記事を執筆する。