STP分析とは?|狙う市場と選ばれる立ち位置を決める7ステップ

この記事でわかること
- STP分析の本質
→ 限られた経営資源をどこへ集中するかを決めるためのフレームワーク - 市場の分け方とポジショニングの軸の選び方
→ 戦略が変わるセグメントの分け方と、顧客が比べている軸の見つけ方 - 実務で成果を出す7ステップ
→ 3C分析の戦略仮説を一文のポジションにまとめる進め方
STP分析とは
STP分析とは、セグメンテーション(Segmentation)・ターゲティング(Targeting)・ポジショニング(Positioning)の3つの工程で、誰に価値を提供するかを決めるフレームワークです。マーケティング学者のフィリップ・コトラー氏らによって体系化され、広まりました。

- セグメンテーション:市場をいくつかのグループに分ける
- ターゲティング:分けたグループの中から狙う市場を選ぶ
- ポジショニング:狙う市場の中で、競合と比べて自社がどう認識されたいかを決める

弊社では、STP分析を「限られた経営資源をどこへ集中するかを決めるための分析」と定義しています。顧客を分類すること自体が目的ではありません。
STP分析が重要な理由
すべての顧客に同じ商品・メッセージ・売り方を提供しても、それぞれのニーズに十分応えることは難しくなります。顧客が求める価値は人によって違い、求める価値が違えば商品設計も訴求も営業方法も変わります。そこで市場を分け、どこへ集中するかを決めるのがSTP分析の役割です。
マーケティング戦略におけるSTP分析の位置づけ
弊社では、マーケティング戦略を次の流れで策定しています。STP分析は、戦略を検証し決める段階の最後の工程です。
① 外部環境を把握する
- PEST分析:社会全体がどう変わっていくかというマクロ環境を把握する
- ファイブフォース(5Forces)分析:業界構造がどう変わっていくかを把握する
- 市場調査(定量調査・定性調査):実際の市場や顧客がどうなっているかを確認する
② 自社の戦い方を考える
③ 戦略を検証し、決める
- 3C分析:選択肢が本当に勝ち筋になるかを検証する
- STP分析(本記事):狙う市場と自社の立ち位置を決める
3C分析では、このあたりなら勝てそうという戦略仮説をつくります。STP分析ではこの仮説を具体化し、どの市場を狙い、その顧客から何者として認識されるかを決めます。3C分析で勝ち筋を探し、STP分析で勝つ場所を選ぶという関係です。
セグメンテーション:市場の分け方

セグメンテーションは、市場を似た特徴を持つ顧客のグループに分ける工程です。代表的な切り口には、次の4つがあります。
- デモグラフィック:年齢・性別・収入・職業・家族構成など
- ジオグラフィック:地域・都市の規模・気候など
- サイコグラフィック:価値観・ライフスタイル・性格・志向など
- 行動:利用頻度・購入状況・ブランドの利用状況など

弊社では、属性だけでなく顧客の価値基準で市場を分けることを重視しています。価値基準とは、顧客が商品やサービスを選ぶときに重視する基準のことです。ここでは、顧客の価値基準を使う理由と、分けた結果が戦略に使えるかの見分け方を解説します。
顧客の価値基準を使う理由
同じ年代や職業の顧客でも、何を重視して選ぶかは人によって違います。重視するものが違えば、響く訴求も比べられる競合も変わります。また、3C分析で整理した価値基準には、顧客インタビューやアンケート、失注理由・継続理由などから得た情報が反映されています。これを主な切り口にすることで、分析が独立せず一続きの戦略としてつながります。
【関連記事】3C分析とは?|顧客の価値基準から勝ち筋を見つける7ステップ
セグメントの良し悪しの見分け方
良いセグメンテーションかどうかは、分けたことでマーケティング戦略が変わるかどうかで見分けます。たとえば、注文住宅の会社が家を建てたい人の市場を分ける場合は次のようになります。
- 良い例:価格を重視する層、性能や安心を重視する層、デザインを重視する層に分ける。それぞれの層に合わせて、商品や訴求方法を変えられる。
- 悪い例:20代・30代・40代に分ける。どの年代にも同じ商品を同じ方法で売るなら、分けた意味がない。
属性で分けること自体は間違いではありません。年代によって予算や求めるものが大きく違い、施策も変わるなら、年代で分けるのは有効です。
▼ 注意点:細かく分けすぎない
顧客の価値観まで掘り下げて市場を分けると、各セグメントの特徴が明確になります。ただし、細かく分けすぎると一つひとつの市場が小さくなりすぎることもあります。ここでも判断の基準は、分けたことで戦略が変わるかどうかです。
ターゲティング:狙う市場の選び方

ターゲティングは、分けたセグメントの中から狙う市場を選ぶ工程です。どこへ経営資源を集中させるかを決めることでもあります。ただし、人数が多いセグメントを選べばよいわけではありません。
セグメントを見極める6つの視点
狙う市場は、次の6つの視点で見極めます。
- 市場性:十分な市場規模があり、今後も需要が見込めるか
- ニーズ:顧客の課題や欲求が強いか
- 支払い意思:課題の解決にお金を払うか
- 競争環境:競合が強すぎないか
- 自社との適合性:自社の強みを生かせるか
- 事業性:利益やLTV(顧客生涯価値)、獲得コストが成立するか
▼ 注意点:市場の大きさだけで選ばない
たとえば、次の2つの市場があるとします。
- 市場A:100億円規模だが、大手企業が多く価格競争が激しい
- 市場B:1億円規模だが、顧客のニーズが強く自社の強みを生かせる
この場合、中小企業にとっては市場Bのほうが利益を出しやすい可能性があります。
3つの型と中小企業での使い分け
ターゲティングには、大きく分けて3つの型があります。
- 無差別型:複数の市場を、ほぼ同じ商品・施策で狙う
- 差別型:複数の市場を狙い、市場ごとに商品・施策を変える
- 集中型:特定の市場に経営資源を集中する
中小企業は人材や予算などの経営資源が限られるため、特定の市場に集中する戦略が有効なケースがあります。まず特定の顧客から強く選ばれ、その実績やブランドで市場を広げていく戦い方です。ただし、必ず集中型を選ぶべきというわけではなく、規模や戦い方によっては差別型や無差別型を選んでも構いません。
▼ ポイント:市場は勝てるくらい狭く、目標を達成できるくらい広く
集中型でも、狭ければ狭いほどよいわけではありません。たとえば〇〇県内で売上3億円規模の〇〇業界の会社のように絞りすぎると、市場が小さすぎて事業目標に届かない可能性があります。反対に絞ることを怖がって広いままにすると、誰にも刺さらなくなります。
ポジショニング:選ばれる立ち位置の決め方

ポジショニングは、狙う市場の顧客から見て、競合と比べて自社をどう認識してもらうかを決める工程です。自社が何を言いたいかではなく、顧客の頭の中でどんな位置を取りたいかを考えます。
立ち位置を決めるときは、ポジショニングマップがよく使われます。縦軸と横軸に顧客が比べる基準をとり、競合と自社を配置して、それぞれの立ち位置を見比べる図です。例として、短期で結果を出したい人と運動を習慣にしたい人に分けられるパーソナルジムの市場であれば、次のようになります。

ポジショニングマップの軸の出し方
軸は、自社が打ち出したい強みではなく、顧客が商品やサービスを比べるときに重視している基準から選びます。
- 悪い例:価格と品質。多くの競合が品質の高さを訴求している場合、各社が同じ側に集まり、違いが見えにくくなる。
- 良い例:パーソナルジムの「短期集中型か、長期で習慣化させるか」と「自分のペースで進めるか、トレーナーに管理してもらうか」。顧客が実際に重視する基準であれば、ジムごとの違いが表れる。

ポジショニングで一番大事なのは軸の選び方です。マップはあくまで手段なので、作ること自体を目的にしないでください。
【関連記事】顧客起点マーケティングとは?|顧客視点との違いや注意点を解説
軸の絞り込み方
軸の候補が多いときは、次の3つの条件を満たす軸を優先します。
- 顧客にとって重要か:顧客が選ぶときに重視しているか
- 競合間に差があるか:競合によって評価が分かれるか
- 自社が優位に立てるか:競合より高く評価される見込みがあるか
あわせて、品質と専門性のように、2つの軸が似た評価基準になっていないかも確認します。なお、軸は必ず2つでなくても構いません。3つ以上残る場合は、1つの軸を固定して2軸のマップを複数つくります。
競合を配置する根拠
マップには同業他社に限らず、顧客が実際に比べている相手を置きます。位置は感覚で決めず、口コミや顧客インタビュー、競合のサイト・価格などをもとに決めます。競合が自社をどう説明しているかより、顧客がどう認識しているかを重視しましょう。
中小企業では大規模な調査は難しいため、最初は現時点の情報にもとづく仮説のマップで構いません。顧客インタビューなどで新しい情報が入るたびに更新していきましょう。
【関連記事】ユーザーインタビューのやり方|顧客の行動理由を事実から読み解く4ステップ
狙うポジションの見つけ方
上のマップでは、短期集中型でトレーナーが管理するジムが多く、長期で習慣化させながら管理するジムはほとんどありません。ただし、競合が少ない場所がチャンスとは限りません。ただし、競合がいない場所がチャンスとは限りません。狙う前に、顧客が求めているか・競合が十分に満たしていないか・自社が提供できるかの3つを確かめましょう。3C分析で勝ち筋を探したときと同じ条件です。
狙う位置が決まったら、誰に・誰と比べて・何で選ばれるかを言葉にして強さを確かめます。この段階ではキャッチコピーにする必要はなく、選ばれる理由まで言えるかを見ます。
- 弱い例:丁寧な指導が受けられるパーソナルジム
- 強い例:短期で絞ってもすぐ元に戻ってしまった人に、短期集中型のジムと比べて、運動が習慣になるまで伴走しながら管理してくれる点で選ばれるジム
STP分析の進め方7ステップ

STP分析の解説では、スターバックスやトヨタなど大手企業の事例がよく使われます。しかし、結果を後からセグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングに当てはめるだけでは、自社でどう進めればよいかまでは見えてきません。事例から学ぶときは、顧客の価値基準や競合、市場の分け方などをどんな情報から判断したのかを見る必要があります。
ここからは、その判断を自社で進めるための手順を7つのステップで解説します。
ステップ
1
3C分析の戦略仮説を確認する
顧客・競合・自社の視点から、どんな勝ち筋がありそうかを確認します。3C分析で一文にまとめた戦略仮説と、その根拠となった価値基準を手元に置きましょう。STP分析で使う切り口や軸は、ここから持ってきます。
ステップ
2
市場を分ける切り口を決める
3C分析で書き出した価値基準を中心に、属性・行動・利用状況なども含めて切り口の候補を出します。そのうえで、分けたことで戦略が変わる切り口だけを残します。
ステップ
3
分けた市場を評価する
分けたセグメントを縦に、6つの視点を横に並べた表をつくり、セグメントごとに○・△・×で評価します。評価基準は自社の事業目標や経営資源に合わせて設定し、3C分析で集めた顧客の声や競合の情報を根拠に判断しましょう。
ステップ
4
狙う市場を決める
評価をもとにどのセグメントに集中し、どのセグメントを捨てるかを決めます。3つの型のどれで狙うかも、このステップで考えます。選ぶことは捨てることでもあるため、狙わないセグメントも言葉にしておきましょう。
ステップ
5
競合を再定義する
狙う市場の顧客が、実際にどこと比べて選んでいるかを洗い出します。狙う市場が決まると、比べられる相手も変わります。
ステップ
6
ポジショニングの軸を決めて競合を配置する
狙う市場の顧客が競合と比べるときの基準を書き出し、軸の候補にします。候補を3つの条件で絞り、軸同士が重なっていないかを確かめたら、口コミや顧客インタビューをもとに競合と自社をマップに配置しましょう。最後に、顧客ニーズがあり、競合との差別化ができ、自社の強みを生かせる位置を探します。
ステップ
7
ポジションを一文で言語化する
最後に、STP分析の結果を一文にまとめます。3C分析で一文にまとめた戦略仮説を、市場の捉え方と狙う顧客まで具体化したものです。次の型に当てはめると、まとめやすくなります。
▼ 一文の型
〇〇という価値基準で市場を捉え、△△という顧客を優先し、□□と比べられたときに××という価値で選ばれるポジションを狙う
例:短期で結果を出すか運動を習慣にするかという価値基準で市場を捉え、短期で絞っても元に戻ってしまった人を優先し、短期集中型のジムと比べられたときに、運動が習慣になるまで伴走しながら管理してくれる価値で選ばれるポジションを狙う

STP分析は基本的にS→T→Pの順で進めますが、実務では一巡で終わることはほとんどありません。たとえば、Aというセグメントを狙うと決めても競合を見て差別化できないと分かれば、セグメンテーションから見直します。一度で決めきろうとせず、分析の結果を見ながら必要な工程に戻ってください。
STP分析を実務で生かすポイント
ここでは、途中でつまずいたときの戻り方と分析結果をペルソナ設計につなげる方法を解説します。
つまずいたときに戻るステップ
STP分析がうまくいかないときは、今の状態に合わせて次のステップに立ち返ります。
| こんな状態なら | 立ち返るステップ |
|---|---|
| 分けた市場ごとに施策が変わらない | ステップ2:市場を分ける切り口を決める |
| 市場は大きいが、自社の強みが生かせない | ステップ3:分けた市場を評価する |
| 誰にも刺さらない、または事業目標に届かない | ステップ4:狙う市場を決める |
| 競合に同業他社しか挙がっていない | ステップ5:競合を再定義する |
| マップ上で競合との差が見えない | ステップ6:ポジショニングの軸を決めて競合を配置する |
| 軸を見直しても差別化できない | ステップ2:市場を分ける切り口を決める |
| 狙ったポジションを求める顧客がいない | ステップ1:3C分析の戦略仮説を確認する |
ペルソナ設計へのつなげ方
STP分析では、どの市場の顧客を狙うかまでを決めます。次のペルソナ設計では、その市場にいる顧客を1人の人物に絞り込み、悩みや行動の理由まで具体的に描きます。弊社では、その後にカスタマージャーニー設計、ベネフィット設計と進めます。
分析をしただけで終わらせず、決めたターゲットとポジションを商品や訴求、営業に反映させましょう。決めた立ち位置はまだ仮説なので、ペルソナ設計以降の工程で具体化しながら、実際の顧客の反応を見て確かめます。
まとめ:STP分析で狙う市場と選ばれる立ち位置を決める

STP分析は、限られた経営資源をどこへ集中するかを決めるための分析です。市場は分けたことで戦略が変わる切り口で分け、狙う市場は人数の多さではなく6つの視点で選びます。ポジショニングでは、顧客が実際に比べている基準を軸にしましょう。まずは3C分析で出した戦略仮説を1つ選び、その価値基準で市場を分けるところから始めてみてください。

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